【京都にある中国のお寺】宇治萬福寺の見どころ、建築・仏像・書と御朱印

萬福寺総門

京都府宇治市に日本のお寺とはどこか雰囲気が違うお寺があります。


日本にある三つの禅宗、臨済宗(りんざいしゅう)・曹洞宗(そうとうしゅう)・黄檗宗(おうばくしゅう)、この中の黄檗宗の萬福寺というお寺です。


なぜ日本のお寺と違うのか、それは萬福寺が中国にあるお寺そっくりに建てられたから。

萬福寺は中国人のお坊さん隠元(いんげん)によって開かれました。

隠元という名前から私たちが知っているものがインゲン豆。これは隠元が日本に伝えたものとされ、他にもスイカや活字の明朝体、400字詰め原稿用紙、木魚なども日本に伝えました。


江戸時代に中国人によって開かれたお寺、萬福寺には今も中国文化が流れています。


この記事では日本とは違う中国の建築、中国人仏師による個性的な仏像、豊かな書の文化などを通して当時の中国文化と萬福寺の見どころを御朱印と合わせて紹介します。

萬福寺基本情報

寺 名黄檗山 萬福寺(おうばくさん まんぷくじ)
拝観時間午前9時~午後5時(受付は午後4時30分まで)
拝観料大人・大学生・高校生500円 / 中学生・小学生300円
拝観場所三門・天王殿・大雄宝殿・法堂・開山堂など
宗 派禅宗(黄檗宗)
御本尊釈迦如来
アクセスJR奈良線または京阪宇治線「黄檗駅」下車徒歩5分
駐車場・駐輪場普通車500円(最初の90分)

アクセス

萬福寺のある場所は京都の宇治。宇治といえば抹茶や平等院が有名です。萬福寺は知らなくても平等院は知っている人が多いと思います。


初めて萬福寺へ行くなら平等院と一緒に観光してみるといいかもしせません。宇治の名所、平等院についてまず知りたい方は下記のリンクからどうぞ。

平等院の御朱印について知りたい方はこちらから、御朱印帳について知りたい方はこちら

平等院のシンボル、藤の花を写真撮影したい方はこちら

平等院から萬福寺への行き方はJR奈良線または京阪電車「宇治駅」から2駅、「黄檗駅」で下車して少し歩くと到着します。平等院からはそれほど遠くありません。


また途中の「三室戸駅」の近くにはあじさいが有名なお寺、三室戸寺があります。あじさいシーズンの三室戸寺と萬福寺を一緒に観光するのもいいかもしれません。


三室戸寺のあじさいについてについて知りたい方はこちら

萬福寺の歴史

中国明時代の禅宗の僧、隠元は日本から何度も招かれ、

1654年、63歳の時に20人あまりの弟子たちとともに来日しました。

もともとは3年で帰る予定でしたが引き止められます。のちに後水尾法皇や徳川幕府から崇敬を受けて、新しく寺を建てることを許されました。

萬福寺は江戸時代初めの1661年、隠元によって創建されました。

隠元はもともと住職を勤めていた中国福建省にある黄檗山萬福寺と、全く同じ名前のお寺を京都の宇治に開きました。

お寺の建て方も中国の様式に沿って建てられています。

萬福寺の見どころ 建築・仏像・書

萬福寺は江戸時代の中国文化を建築や仏像、書を通して今でも見ることができます。

〈 萬福寺境内図 〉

萬福寺境内図

萬福寺の伽藍は主要な建物の三門・天王殿・大雄宝殿・法堂が一直線に並び、左右の各お堂が回廊で繋がっています。

中国の建築様式(明朝様式)で建てられた創建当初のもので、ほとんどの建物が重要文化財に指定されている貴重な建築のあるお寺です。

また萬福寺の伽藍は龍に例えられています。なぜ龍なのかというと龍は仏の教えを守護する役目があり、そのようなことから境内を守ってもらうためのようです。


総門前にある二つの井戸が龍の目を、お堂をつなぐ菱形の敷石(石條)が竜の背中の鱗を表しています。


菱形の敷石の上は一般の僧は歩くことはできず、住職しか歩くことを許されないそうです。参拝者は歩いていても注意されることはありません。


境内はとても広いですが建物内に入れるのは玄関である天王殿(てんのうでん)と、本堂にあたる大雄宝殿(だいおうほうでん)の2箇所。


そしてこの2つの建物の中には中国人仏師によって作られた個性的な仏像が数多くあります。日本の仏像とは明らかに違う仏像から中国人の造形感覚がわかります。

萬福寺法堂扁額と聯


さらに萬福寺ではいたるところに書が掛けられています。これもほとんどが中国人の書で、代表的なのが建物の入口上に掛けられている扁額(へんがく)と左右に掛けられた聯(れん)といわれる縦長の木がセットになったもの。


この中にはお寺を開いた隠元の書もあります。


ここからはこれらの萬福寺の見どころをより詳細に紹介します。

三門(重要文化財)

萬福寺三門

1678年に建てられた朱塗りの三門。

黄檗宗の大本山だけあって京都の有名禅宗寺院にも負けない立派な三門です。


赤い色も中国のお寺らしさを感じます。残念ながら三門の2階へは登れません。

他の禅宗寺院の三門との違いは屋根の中央に宝珠がついているのと、端にシャチホコのような魚がついていること。柱の下の石が太鼓の胴の形をしているなどがあります。

2階に掛かっている「黄檗山」の扁額と、1階に掛かっている「萬福寺」の扁額はいづれも隠元の書。

中国の高僧が書く文字は厳しく鋭い文字が多いのですが、隠元の書く文字はおおらかで優しさを感じます。

天王殿(重要文化財)

萬福寺天王殿

1668年に建てられた萬福寺の玄関にあたる天王殿。

柱にはチーク材が使われています。×型に組まれた手すりは中国で使用されているデザイン。


天王殿の内部には本尊に弥勒菩薩(布袋)坐像、裏に韋駄天(いだてん)立像と左右には四天王が祀られています。

弥勒菩薩(布袋)坐像

萬福寺弥勒菩薩(布袋)坐像

中国に実在したお坊さんがモデルの布袋さん。七福神の一人としても知られています。


萬福寺では弥勒菩薩(みろくぼさつ)として祀られており、布袋は弥勒菩薩の化身ともいわれています。

製作は中国人仏師の范道生(はんどうせい)

隠元が中国から招いたというまだ28歳の若い仏師で、この弥勒菩薩(布袋)坐像の他にも萬福寺の仏像を多数製作しました。


京都のほとんどのお寺では仏像の写真撮影が禁止されていますが、

萬福寺では仏像の写真撮影が可能です。

中国人の作った仏像は、日本人が作った仏像とやはり違います。


仏像が好きな方は日本の仏像との違いを探してみるのもいいかもしれません。


※萬福寺の仏像全てが中国人によるものではありません。

四天王像

弥勒菩薩(布袋)坐像の向かって右側、奥に持国天(写真左)手前に増長天(写真右)。

弥勒菩薩(布袋)坐像の向かって左側、手前に広目天(写真左)奥に多聞天(写真右)。

頭身のバランスがちょっとおかしいタイプの仏像。お寺巡りをしているとこのタイプの仏像を時々見かけることがあります。何か意図があってこのバランスなのか…しかし装飾や造形は非常に凝っています。

韋駄天立像

萬福寺韋駄天立像

弥勒菩薩(布袋)坐像の裏には韋駄天立像が祀られています。


韋駄天は足の速い武神で、僧や寺を守る神として祀られます。


萬福寺の仏像で個人的に一番かっこいいのがこの韋駄天。


他のお寺では胸の前で合唱したポーズの韋駄天をよく見かけますが、萬福寺の韋駄天は体をひねったポーズが決まっています。

大雄宝殿(重要文化財)

萬福寺大雄宝殿

1668年に建てられた萬福寺の本堂、大雄宝殿。

日本では唯一最大のチーク材を使った歴史的建造物です。

禅宗の建築では火灯窓が多いですが大雄宝殿は円窓になっています。


前面廊下の天井は蛇腹天井(黄檗天井)になっていて龍の腹のようなデザインが建築に活かされています。


足元の敷き瓦は竜の鱗を表しているそうです。

萬福寺大雄宝殿扁額

建物の上に掛かっている「大雄宝殿」の扁額は隠元の書。

本尊 : 釈迦如来坐像

萬福寺本尊釈迦如来

大雄宝殿の内部には中央に本尊の釈迦如来坐像。脇侍には左に阿難陀(あなんだ)尊者と、右に摩訶迦葉(まかかしょう)尊者。釈迦の教えを継いだ弟子たちが配置されています。


1669年造立、京大仏師兵部作。こちらは日本人が製作した仏像のようです。

十八羅漢

本尊の左右には九体づつ十八羅漢(じゅうはちらかん)がずらりと並んでいます。


「羅漢」は仏教を開いた釈迦の特に優れた弟子たちのこと。既に悟りを得た尊い人として信仰の対象となっています。


萬福寺の十八羅漢はそれぞれかなり個性的な造形です。

十八羅漢は全て范道生の作。

通常は十六羅漢として祀られることが多いですが、萬福寺では2人増えて十八羅漢として中国と同じ形式で祀られています。

羅怙羅尊者
萬福寺羅怙羅尊者

十八羅漢の中でも特にインパクトが強いのが羅怙羅尊者(らごらそんじゃ)。


釈迦の子供で弟子の一人。この像は胸を開いて仏の顔を覗かせています。


どんな人の心の中にも仏があるということを表しているそうです。


人気の仏像で展覧会への貸し出しなどで萬福寺にいないことも。


ちょうど後ろに窓があって逆光になり、写真を撮るのがちょっと難しい仏像でもあります。

法堂(重要文化財)

萬福寺法堂

1662年に建てられた説法を行うお堂。

中には本尊も飾りもなく須弥壇(しゅみだん)だけが置かれているそうです。


法堂(はっとう)は外から見るだけで中に入ることはできません。

法堂には中国風の手すり、卍くずしの勾欄(こうらん)があります。前面廊下の天井は大雄宝殿と同じ蛇腹天井になっています。


法堂の右には東方丈が、左には西方丈がありますがここも一般の参拝者は入ることができません。


東方丈の入口付近には中国風のデザインがされた机が置かれています。

開山堂(重要文化財)

萬福寺開山堂

1678年に建てられた萬福寺の開山、隠元を祀るお堂。

中には隠元禅師像が置かれています。開山堂も中に入ることはできません。

萬福寺開山堂隠元禅師像

開山堂の奥に安置されている隠元禅師像は、隠元が生きているうちに70歳の古希を祝って作られた寿像。隠元本人の髪や髭が植えられています。

隠元禅師像は范道生の作。

入口の扉には魔除けとされる桃の実の装飾があります。また開山堂にも蛇腹天井や卍くずしの勾欄があります。


開山堂の左には隠元が萬福寺の住職を退いた後、隠居した松隠堂(しょういんどう)があります。こちらも通常非公開。

その他の建築とデザイン

主要なものの他にも中国らしさを感じる建築やデザインがたくさんあります。

開梆

萬福寺開梆

僧たちが食事をする場所斎堂前には棒で叩いて時間を知らせる魚の形をした法具、開梆(かいぱん)があります。


目を閉じることのない魚は不眠不休を象徴し、寝る間も惜しんで日夜修行に励むようにという思いを込めて使われているそうです。


開梆は木魚の原型となったもの。

回廊の鐘

萬福寺回廊

萬福寺の各建物は回廊で繋がっています。昔のお寺の絵などを見ると回廊で繋がっているお寺がたくさんありますが、現在も回廊が残っているお寺はかなり少ないです。

回廊の途中に吊るされている鐘の裾は円形ではなく波状になっています。これは日本の鐘ではあまり見ることのない形です。


萬福寺の鐘と同じようなデザインの鐘が、洛北の蓮華寺にもあります。


洛北蓮華寺について知りたい方はこちらの記事からどうぞ↓
【京都紅葉の名所】カメラで撮りたくなる蓮華寺 紅葉シーズンの拝観と御朱印

萬福寺の庭

釣鐘の横には庭があります。藤棚があり菖蒲なども咲いています。

建築と書

萬福寺の門

萬福寺ではいたる所で書を見ることができます。建物の入口では建築と書が一体となって中国のお寺らしい雰囲気をつくっています。

萬福寺の門

書体も篆書・隷書・楷書・行書・草書と様々です。文字をただ見るだけでもおもしろく、中国の書の文化の豊かさが感じられます。

萬福寺禅堂

座禅をする場所、禅堂の入口上に掛かる「選仏場」の扁額も隠元の書。

普茶料理

萬福寺黄龍閣

境内にある黄龍閣(おうりょうかく)では中国風精進料理の普茶料理(ふちゃりょうり)をいただくことができます。


普(あまね)く大衆に茶を施すという意味で普茶料理というそうです。


日本の精進料理との違いは一つのお皿に盛られた料理を皆で分け合って食べること。


コロナ禍の現在は提供が中止されることもあります。

萬福寺の御朱印

御朱印はいつでもいただける通常御朱印と、決められた日のみいただける特別御朱印があります。

通常御朱印

5種類の御朱印があり、全て300円で御朱印帳に書いてもらうことができます。

萬福寺御朱印

左 : 布袋尊 右 : 大雄宝殿

萬福寺は京都の7箇所の社寺を回る都七福神めぐりのうち、布袋尊の御朱印がいただけます。

萬福寺御朱印

左 : 韋駄天 右 : 萬徳尊

萬福寺御朱印

魚 梛

特別御朱印

萬福寺限定御朱印

毎月8日・18日・28日のみ、8の付く日限定布袋尊の特別御朱印。

この他にも行事によって特別御朱印が出されることがあります。

萬福寺

住 所 : 〒611-0011 京都府宇治市五ケ庄三番割34
電 話 : 0774-32-3900