
京都市左京区大原にある古知谷阿弥陀寺(こちだにあみだじ)は大原の名所、三千院から北へ少し足を伸ばした所にあります。
山深い場所にあり、お寺本来の静かで落ち着いた雰囲気を味わうことができます。
周りの自然の景色とは対照的に境内の庭はとても美しく整えられています。そこに植えられている山野草(さんやそう)はそれぞれ個性的な形をしており、季節ごとに美しい花を咲かせています。
古知谷阿弥陀寺に咲く山野草で特に有名なのが5月に咲くクリンソウです。これらの山野草を写真に撮るのも面白く、自然や花が好きな方でカメラが趣味の方におすすめできるお寺です。
紅葉の名所として取り上げられることが多いですが、珍しい山野草をおよそ80種も見ることができるのも古知谷阿弥陀寺の魅力の一つです。この記事では古知谷阿弥陀寺の拝観内容とともに、山野草たちの魅力も紹介します。
[ もくじ ]
古知谷阿弥陀寺 基本情報
寺 名 | 古知谷阿弥陀寺(こちだにあみだじ) |
拝観時間 | 午前9時~午後4時 1月と2月は拝観停止 |
拝観料 | 500円 |
拝観場所 | 本堂・石廟・宝物殿・庭園など |
宗 派 | 浄土宗 |
御本尊 | 弾誓上人像 |
アクセス | 地下鉄烏丸線「国際会館駅」より、大原・小出石行き京都バス「古知谷」下車徒歩約25分 |
駐車場・駐輪場 | 無料駐車場あり |
アクセス
いちばん下のしるしが京都駅、真ん中が三千院、いちばん上が古知谷阿弥陀寺です。
京都駅からかなり離れた場所に古知谷阿弥陀寺があるのがわかると思います。
バスで行くことができますが、本数が少なく効率がいいとはいえません。自動車やレンタカー、バイクなどで行く方がおすすめです。

古知谷阿弥陀寺の歴史

正式には「光明山法国院阿弥陀寺」という浄土宗のお寺で、古知谷という場所にあることから古知谷阿弥陀寺と呼ばれています。
江戸時代の1609年、弾誓(たんぜい)上人によって開かれた念仏の道場で、諸国を行脚し修行を重ねた弾誓上人が最後に辿り着いたのが古知谷でした。
本尊は上人自ら草刈り鎌で刻んだ像で、自身の頭髪が植えられています。浄土宗は一般に阿弥陀如来だけを本尊としますが、古知谷阿弥陀寺では阿弥陀如来とともに弾誓上人がつくった像を本尊とするため「弾誓仏一流本山」といわれます。
弾誓上人は、生きているうちに洞窟の中にある石棺(せっかん)の真下に掘ってある石龕(せきがん)に入り「ミイラ仏」となりました。古知谷阿弥陀寺を開いた4年後、62歳で亡くなったとされています。現在は石棺に「ミイラ仏」が収められています。
また皇族諸家とも関係が深く閑院宮ならびに有栖川宮両家の祈願所となっています。
古知谷阿弥陀寺の伽藍

古知谷阿弥陀寺の伽藍は、山門のある山のふもとの駐車場から上り坂を上ってたどり着きます。自動車の場合は伽藍のすぐ近くにある駐車場まで上ることができます。
山の中腹にある伽藍はそこまで広くないので拝観にはそこまで時間はかかりません。普通に拝観して30分程度あれば大丈夫だと思います。
山門と参道

古知谷阿弥陀寺の入口にある中国風の楼門、山のふもとにある駐車場横にあります。
ここから参道を上り拝観受付へ向います。山門から本堂までは約650メートル。
門前の石柱には「弾誓仏一流本山」と彫られています。

個人的には参道をゆっくり歩いて上がるのがおすすめです。小川のせせらぎを聴きながら木々の中を歩くとそこまで遠いとは感じないはずです。ただしずっと上り坂なので暑い時は水分補給を忘れずに。自動販売機はありません。


駐車場

山腹にある伽藍の近くにも車数台分の駐車場があります。
下から車でここまで上れますが、道が細くすれ違えるスペースもあまりないので運転に自信がない人は下の駐車場に止めて歩くほうがいいと思います。
実相の滝・古知谷カエデ

古知谷阿弥陀寺の伽藍入口付近まで参道を上ってくると2段の小さな滝(実相の滝)が見えます。
実相の滝の横にあるのが天然記念物で樹齢約800年といわれる古知谷カエデ。奥の建物前の太い木が古知谷カエデです。ここまで上がってくれば拝観受付は階段を上がってすぐ。
2023年6月、古知谷カエデ伐採

古知谷カエデ伐採後 2023年11月9日撮影
2023年6月古知谷カエデは姿を消しました。
京都市の天然記念物に指定されている古知谷カエデですが、樹勢の衰えから倒木の危険あり伐採されました。
悩んだ末の苦渋の決断だったそうです。阿弥陀寺の創建以前からあった古知谷カエデの長い歴史に幕が閉じられました。

立札があるあたりがかつて古知谷カエデがあった場所です。
山腹の伽藍
参道の坂を上り終えた先、山の中ほどに古知谷阿弥陀寺の伽藍があります。
〈 古知谷阿弥陀寺境内図 〉

① | 拝観受付 |
② | 瑞雲閣 |
③ | 書院 |
④ | 弾誓上人石廟 |
⑤ | 宝物殿 |
⑥ | 本堂 |
⑦ | 鐘楼 |
※上が北になります。※個人的に作ったもので公式のものではありません。正確な図面はわからないので細部、縮尺は実際と異なります。
瑞雲閣

拝観受付の右側にある建物で崖に迫り出すように建てられた茶室。
瑞雲閣の中に入ることはできません。


横にはシャクナゲが植えられており春には美しい花を咲かせます。瑞雲閣前の小さなスペースにもかわいらしい山野草が植えられています。
書院

建物内の拝観はまず玄関から靴を脱いで書院へ上がります。


玄関横の小さな庭にも山野草が密かに咲いています。
写真左はシライトソウ。白くてふわふわした花がいっぱい伸びています。
写真右はコマクサ。高山の過酷な環境のなかで美しい花を咲かせることから「高山植物の女王」といわれるそうです。苔との組み合わせが美しいです。
建物内の拝観できる場所は書院・弾誓上人石廟・宝物殿・本堂の4箇所。それぞれは廊下で繋がっており中庭が2つあります。
書院中庭に咲くクリンソウ(5月)

2022年5月16日撮影
古知谷阿弥陀寺に咲く山野草の中で特に有名なのがクリンソウ(九輪草)です。
書院の中庭にたくさん植えられており5月に見頃を迎えます。
ピンク・赤・白・黄といろいろな色の花が咲きます。カラフルなので写真を撮っても映えます。
※これより下のクリンソウの写真は全て2022年5月16日に撮影したものです。


花の咲く姿がお寺にある塔のてっぺんの装飾、九輪(クリン)に似ていることが名前の由来となっています。

書院から額縁構図で庭全体を撮影してもきれいです。

私が訪れた時は履物が用意されており、庭に降りることができたのでいろいろな角度から写真を撮らせてもらいました。背景に写っているのは弾誓上人石廟がある建物です。
書院中庭に咲くダイモンジソウ(10月)

2022年10月12日撮影
古知谷阿弥陀寺に咲く山野草の中で、もうひとつ有名なのがダイモンジソウ(大文字草)です。
5枚の花びらの長さと並びが、漢字の「大」に見えることが名前の由来。
5月にクリンソウが咲いていた書院の中庭は、10月にはダイモンジソウの庭に変わります。
※これより下のダイモンジソウの写真は全て2022年10月12日に撮影したものです。

小さくて繊細な花を咲かせるダイモンジソウ。中庭にたくさん植えられています。




白・ピンク・赤などの色に、花びらの形が少し違うものなど複数の種類が植えられているようです。

2022年10月12日に訪問したときは、石垣の上に並んで咲く彼岸花と一緒にダイモンジソウを見ることができました。
ダイモンジソウはこの中庭だけでなく、拝観受付前の坂道など境内でも見ることができます。どこに咲いているか探すのも楽しみのひとつです。
弾誓上人石廟

建物の奥に洞窟があり、そこに置かれた石棺の中には弾誓上人のミイラが収められています。
石棺の中を見ることはできません。通路に置いてあるライトを持って石棺のすぐ近くまで行けます。
洞窟の中はかなり暗く、水が染み出していてぽたぽたと水滴が落ちてきます。ミイラ仏が目の前にあるということもありちょっと怖さを感じる空間です。
宝物殿

弾誓上人石廟の右側にある古知谷阿弥陀寺の宝物が展示された小さな部屋。天皇や皇族から賜った宝物が展示してあります。

宝物殿正面の展示。


写真左、宝物殿左側の展示。写真右、宝物殿右側の展示。
展示の内容は2022年5月16日撮影時のものです。
本堂

江戸時代に建てられた古知谷阿弥陀寺で最も大きな建物。右側には鐘楼や石仏があります。
本尊 : 弾誓上人立像

本堂内正面に弾誓上人自作で、自身の髪を植えたという弾誓上人立像が祀られています。
髪の毛は風化して今ではわずかに残るのみとなっています。


弾誓上人立像の右側に鎌倉時代の作で重要文化財の阿弥陀如来坐像が安置されています。一説には高山寺の明恵上人の作ともいわれています。
明恵上人のお寺、高山寺について知りたい方はこちらのリンクからどうぞ↓
鳥獣戯画のふるさと京都高山寺[2020年台風被害から復旧した境内と御朱印]
また本堂内右側にも宝物が展示されており、こちらには弾誓上人関係のものが展示してあります。


本堂の前には白砂が敷かれた枯山水の庭があり舟形の石や立石、紅葉が配置されています。
秋の紅葉はここの景色がとてもきれいです。
季節を彩る古知谷阿弥陀寺の山野草たち

2022年5月16日撮影 エビネラン
古知谷阿弥陀寺では普段あまり目にすることのない植物を見ることができます。
高山などに咲く山野草と呼ばれるもので、季節ごとに様々な種類が開花します。
境内のあちこちに植えられている小さくかわいらしい花が訪れる人の目を楽しませてくれます。
それぞれの花の形も面白いので写真に撮るのも楽しみ方の一つです。
とても小さな花もあるのでアップで写真を撮りたい場合は、マクロレンズを用意しておいた方がいいかもしれません。

拝観受付左側の庭園

通常の拝観ルートの反対側、拝観受付左側にも庭があります。
こちらの庭にはたくさんの山野草が植えられています。建物の中だけを見てこちらの庭を見忘れることがないように。ちなみに、奥にある2つの建物には入れません。
この庭を含む古知谷阿弥陀寺境内の庭は季節ごとに植えられている山野草が異なります。
毎年同じものがあるかはわからないのでどんな山野草があるかは訪れたときのお楽しみ。


2022年6月16日撮影 [左]エンビセンノウ [右]キリシマヤツシロソウ
花の形が面白いのも山野草の特徴。普通に生活しているとなかなか目にしない花が咲いています。

2022年5月16日撮影 シラユキゲシ


[左] 2023年4月19日撮影 タイツリソウ [右]2022年8月6日撮影 シラヒゲソウ
個性豊かな山野草は見ているだけでも楽しいです。
花目録 2023

2022年8月6日撮影 書院玄関鉢植え サギソウ
古知谷阿弥陀寺の書院玄関付近に置いてある花目録で一年のうちどんな花が咲くかわかります。
2023年版は2022年のものより山野草の数が増えています。
この花たちの名前がだいたいわかる人はかなり山歩きや山野草が好きな人だと思います。普通の人は知らない花がほとんどだと思います。
必ず開花するとは限りませが、この中に自分の好きな花があれば咲く季節に合わせて訪れてみてはいかがでしょうか。



2022年10月12日撮影 トリカブト
猛毒のトリカブトもひっそりとあったりします。この時は鐘楼前付近にありました。
山野草に興味を持った方はいろいろ探してみると好みのものが見つかるかもしれません。
古知谷阿弥陀寺の紅葉

2022年11月14日撮影
京都市内より気温が低い大原にある古知谷阿弥陀寺の紅葉は11月中旬あたりから。
京都市内の紅葉が色づきはじめてから行くと見頃がすぎている可能性があるので注意が必要です。
ここからは古知谷阿弥陀寺の紅葉を紹介します。これ以降の紅葉写真は全て2022年11月14日に撮影したものです。

山門のある山のふもとの駐車場周辺にも紅葉の木が植えられています。
山腹の伽藍

古知谷阿弥陀寺の紅葉、見どころは山腹の伽藍南の山側あたり。
拝観受付左にある建物のあたりは黄色い紅葉、その横にオレンジから赤の紅葉がグラデーションになって見えます。


いつもは山野草がたくさん咲いている古知谷阿弥陀寺も紅葉シーズンは紅葉がメインのようです。
山野草は10月に咲いていたダイモンジソウの残りと、瑞雲閣前の小さなスペースにミセバヤ(写真右)しか見つけることができませんでした。

古知谷阿弥陀寺の紅葉は、本堂から見る瑞雲閣周辺が最も美しいかと思います。
紅葉の名所と比べれば紅葉は少ないですが、訪れる人は少なく山のお寺で静かに紅葉を楽しむことができます。


本堂の中から座ってゆっくり瑞雲閣を眺めてみたり。前庭からは色づいた古知谷カエデを見ることもできます。※古知谷カエデは2023年6月倒木の危険があるため伐採されました。
古知谷阿弥陀寺の御朱印
御朱印は拝観受付で御朱印帳を渡し、帰りに受け取るスタイルです。御朱印帳に直接書いてもらえます。
基本的に通常御朱印1種類のみですが、2017年の特別公開の時には限定御朱印が出されていました。現在はいただくことができません。
通常御朱印

弾誓佛 300円
限定御朱印
2017年春期•京都非公開文化財特別公開で、古知谷阿弥陀寺が特別公開された時に限定御朱印が授与されていました。
いただいてはいませんが、色紙に「感得阿弥陀仏」と金字で書かれたものが500円でした。
古知谷阿弥陀寺
住所 : 〒601-1235 京都府京都市左京区大原古知平町83
電話 : 075-744-2048
1月と2月は拝観停止