
2020年10月27日(火)第56回京都非公開文化財特別公開にて特別公開されている、京都市東山区にある泉涌寺塔頭の戒光寺を訪れました。
戒光寺は通常公開されているお寺なのでいつでも拝観することができます。
ただし本堂内陣へ入れるのは特別公開が行われる期間中のみになります。
戒光寺には京都では珍しい巨大な仏像が残っています。経典に説かれる釈迦の身の丈「一丈六尺」約4.85mの等身大の像で京の大仏・丈六さんとも呼ばれています。
御本尊のこの仏像は木彫の釈迦如来立像としては世界一の大きさで、制作は運慶と長男湛慶(たんけい)の合作。如来像としては珍しい極彩色の仏像です。
これだけの仏像が残っていながら京都のガイドブックや仏像を紹介する本にも掲載されているのをあまり見たことがありません。
この記事では京都仏像の穴場、戒光寺の特別公開の内容や釈迦如来立像、御朱印についても紹介します。
応仁の乱でも焼けなかった巨大な釈迦如来立像は、一度は見ておくことをおすすめします。
[ もくじ ]
第56回京都非公開文化財特別公開 戒光寺基本情報
公開場所 | 泉涌寺塔頭 丈六 戒光寺(かいこうじ) |
公開期間 | 2020年10月12日(月) ~ 11月1日(日) |
時 間 | 午前9時~午後4時(拝観受付) |
拝観料 | 大人1000円 / 中・高生500円 |
公開内容 | 本堂内陣(釈迦如来立像・不動明王像・曇照忍律上人坐像など) |
宗 派 | 真言宗 |
御本尊 | 釈迦如来 |
アクセス | 京阪電車・JR奈良線「東福寺」駅下車、徒歩15分 市バス「泉涌寺道」下車、徒歩約5分 |
駐車場・駐輪場 | なし |
泉涌寺塔頭、戒光寺の場所

泉涌寺の総門を入って一番最初の左側にあるのが戒光寺。

戒光寺の入口。ここからはとても約10mもの仏像があるとは想像できません。泉涌寺は知られていても、塔頭の戒光寺はまだまだ知名度が低いような気がします。
第56回京都非公開文化財特別公開では本山の泉涌寺や、同じ塔頭で快慶作の宝冠阿弥陀如来坐像がある悲田院も公開されています。
戒光寺の歴史
戒光寺の創建は鎌倉時代の1228年、宋から帰国した曇照(どんしょう)律師が後堀河天皇の勅命により現在の京都駅の西、猪熊八条に戒律復興の道場として建立されました。
しかし応仁の乱で建物は焼失、本尊釈迦如来は兵火を逃れ堀川一条へ移転。
さらに河原町三条へ移転し、江戸時代の1645年後水尾天皇の発願により泉涌寺山内に移転再興され泉涌寺塔頭として現在に至ります。
尚、今も猪熊八条と堀川一条には戒光寺町の名が残っています。
拝観内容
第56回京都非公開文化財特別公開では通常入れない本堂の内陣に入ることができました。
内陣の公開は今回に限ったことではなく春と秋の年2回、内陣特別参拝があるのでその時に行けば内陣へ入ることができます。
本堂

本堂前の建物は後に付け加えられたもの。こちらから上がり中で本堂と繋がっています。
【重文】丈六釈迦如来立像

写真 : 京都古文化保存協会「拝観の手引」
戒光寺の本尊は鎌倉時代の仏師、運慶・湛慶親子の合作。木造・寄木造で玉眼。
少し前かがみで衣には文様があり、爪が長いのもこの像の特徴です。応仁の乱を免れて約800年前の姿が現在まで伝わっています。
台座から頭まで約5.4m、台座から光背の上まで約10m。
台座と光背も像が造られた当時のもので、お寺の説明によると世界最大の木造釈迦如来立像。
通常は外陣から正面のみ、大きすぎて一部しか見ることができませんが、特別公開では内陣に入り台座から光背のてっぺんまで見ることができます。
釈迦像の左側は照明が当てられており、円形の中に牡丹の花と思われる截金(きりかね)を用いた衣の文様がしっかりと見えました。
光背も巨大で最上部が頭を覆うように曲がって前に伸びています。あまりに大きいためこの像を造ってから本堂を建てたようです。
釈迦像の喉元には血の流れたような跡(サイトトップの写真参照)があります。これは権力争いで後水尾天皇が暗殺者に寝首を掻かれた時、この釈迦如来が身代わりとなりその際についたという話が残っています。この逸話から「身代わり丈六さん」と呼ばれています。
天井にはNASAの宇宙服と同じ素材でできた防火カーテンがあり火事の時は熱を感じて抑えているひもが切れ釈迦如来像を包み込み火から守るそうです。
こちらの本でも戒光寺が紹介されています。
京都で見るべき仏像が網羅されておりおすすめです。
また世界遺産仁和寺の近くにある転法輪寺にも巨大な仏像があります。
高さ約7.5mの御室大仏について興味のある方はこちらのリンクからどうぞ↓
【京都最大級の仏像】写真OKの御室大仏。転法輪寺の特別拝観と御朱印
不動明王像

写真 : 京都古文化保存協会「拝観の手引」
内陣の左奥に祀られている不動明王像。造られた時代と作者は不明ですが、鎌倉時代のものと推定されています。足の裏を見せている不動明王像は珍しいようで日本でも2体くらいしかないそうです。
顔や体に張りがあり若々しい感じの不動明王に見えました。
文殊菩薩像

写真 : 戒光寺パンフレット
本堂とその前の建物とのつなぎ目の部分、右側にたくさんの位牌や仏像とともに安置されている小さな文殊菩薩像。
戒光寺は京都十三仏第三番札所になっています。
その他の文化財
この他にも内陣の右奥には開山の曇照忍律上人坐像(重文・鎌倉時代)や弘法大師像なども置かれています。
仏像の他には寺宝(香木・法具・版木・お経など)や木製の下馬の札が展示されており、釈迦如来立像の裏面には三幅の掛け軸とその下には巨大な数珠が置かれていました。
左右の壁にはお釈迦様の誕生から亡くなるまでの様々なお話を描いたお釈迦様一代記が掛けられています。


入口の門から正面に見える空間にしつらえられたお花や道具も素敵でした。
泉山融通弁財天(秘仏)

本堂の向かい側にある泉山融通弁財天は秘仏のため普段は見ることができません。祀られているのは伝教大使・最澄の作と伝えられる木造極彩色の八本の腕を持つ坐像。
ご開帳は1月成人の日の七福神巡りと、11月3日の弁財天大祭の年2回。
金銭・学芸・商売など融通を利かせてあらゆるお願いを成就させる弁天様です。
戒光寺の御朱印
戒光寺の御朱印は通常3種類(丈六殿・弁財天・文殊菩薩)
内陣が公開される時のみ不動明王の御朱印が授与されます。
通常3種類の御朱印はすべて御朱印帳に書いてもらうことができます。各300円。
不動明王の御朱印は書き置きのみで500円です。
11月3日の泉山融通弁財天大祭の日には特別朱印(1000円)もあるようです。


丈六殿 300円 弁財天 300円
京都十三仏霊場 第三番

文殊菩薩 300円
内陣特別参拝期間中のみ

不動明王(書き置きのみ) 500円
戒光寺内陣特別参拝
戒光寺は通常無料で公開されているお寺で、いつでも参拝することができますが通常時は本堂の内陣へ入ることはできません。
内陣の特別公開は春と秋の年2回行われています。
京都非公開文化財特別公開には行けなかった方のために、2020年の内陣公開期間を掲載しておきます。
毎年の公開期間は戒光寺ホームページを参照してください。
◆2020年内陣公開期間
春 : 4月1日(水)〜15日(水) 秋 : 11月14日(土)〜29日(日)
【特別参拝料】500円 【不動明王御朱印】500円
【時間】午前9時〜午後4時30分
戒光寺は東福寺から歩いていける距離にあるので紅葉の東福寺の帰りに少し足を伸ばしてみるのもいいかと思います。
戒光寺は仏像の穴場でしたが、観光客が少ない観光の穴場もあります。
興味のある方はこちらのリンクからどうぞ↓
【京都観光の穴場】皐月と紅葉がおすすめの等持院、見どころと御朱印を紹介