京都市右京区の北部、京北にある常照皇寺(じょうしょうこうじ)は桜の名木があることで有名なお寺です。
常照皇寺は年中公開していますが、おすすめは桜のシーズンになります。
境内には国の天然記念物「九重桜」をはじめ、「左近の桜」、「御車返しの桜」と3本の桜の名木があります。
公共交通機関で行くこともできますが京都駅からバスで約2時間くらいかかり、乗り継ぎのローカルバスも本数が少ないのでアクセスが良いとは言えません。
そのような理由から常照皇寺へは車やバイクで行くのがおすすめです。無料駐車場もあります。
お花見に、春のドライブやツーリングに、歴史あるお寺の桜を見に出かけてみませんか?この記事ではのどかな風景の中にたたずむ常照皇寺と庭園に植えられた桜について紹介します。
[ もくじ ]
常照皇寺へのアクセス
下にある赤い目印が京都駅。上にある赤い目印が常照皇寺です。
京都駅からだと周山街道(国道162号)を北上するのが一般的なルートでしょうか。車だと片道1時間くらいかけていくつかの峠を越え、数カ所のトンネルを抜けて京北に入り、国道477号で大堰川(おおいがわ)を右手に見ながら進んでいくと到着します。
周山街道の途中には鳥獣戯画で知られる世界遺産の高山寺もあります。
常照皇寺までは一応バスで行くこともできますが、本数が少ないので注意が必要です。
道中にも桜が見れる場所があるのでレンタカーや車、バイクで春のドライブやツーリングにもおすすめです。
常照皇寺 基本情報
寺 名 | 大雄名山 常照皇寺(じょうしょうこうじ) |
拝観時間 | 午前9時~午後4時 |
拝観料 | 500円 |
拝観場所 | 方丈・開山堂・舎利殿・庭園など |
宗 派 | 禅宗・臨済宗 天龍寺派 |
御本尊 | 釈迦如来 |
アクセス | 自動車 : 国道162号線福王子交差点から約45分 バス : 京都駅からJRバス「周山」下車 約1時間30分 「周山」から京北ふるさとバス乗り換え約15分 「山国御陵前」下車 徒歩10分 |
駐車場・駐輪場 | 無料駐車場あり(トイレは駐車場だけにしかありません) |
常照皇寺の歴史
常照皇寺は鎌倉時代と室町時代の間、北と南に二人の天皇が並立していた南北朝時代の北朝初代天皇の光厳法皇(こうごんほうおう)が晩年を過ごしたお寺。
室町時代前期の1362年に、光厳法皇によって開かれた皇室ゆかりの禅宗寺院です。
この地にあった天台宗の成就寺という廃寺を改修して小庵を建てたのが常照皇寺の始まりと伝えられています。
戦国時代に兵火にあいましたが、後に皇室の寄進等により寺を復興しました。
簡素な山門をくぐり階段を上っていくと勅額門があります。門には光厳法皇の宸筆を写した「仰之弥高」の扁額が掛かっています。仰(あお)げば弥(いよいよ)高しと読むようです。
拝観内容と見どころ
常照皇寺は京都市の中心部からかなり離れているため、桜のシーズンでも観光客で混雑することはほとんどありません。ゆったりと拝観したりお花見を楽しむことができます。
拝観順路は特に決まってないようです。庫裡玄関の拝観受付で拝観料を支払い建物の中から先に見る場合は靴を脱いで、庭園から先に見る場合は靴を履いたまま玄関の横から庭園に出れるようになっています。桜のシーズンは庭園から見てもいいかもしれません。
常照皇寺境内図
写真 : 京都市の看板より
常照皇寺の境内はそこまで広くないので見学には30分〜1時間もあれば十分かと思います。
紅葉も有名ですがせっかくなら天然記念物の九重桜などが咲く春の桜のシーズンがおすすめです。
勅額門をくぐると正面に勅使門が見え、それを左に曲がると拝観受付のある庫裡があります。
勅額門の右には碧潭池(ひょうたんいけ)という庭園が広がっています。このあたりは紅葉のシーズンがよさそう。奥へと伸びる道は光厳天皇の山国御陵へと続きます。
常照皇寺の桜の見頃
常照皇寺には桜の名木が3本ありそれぞれ開花時期が異なります。
①九重桜(ここのえざくら)
●見頃は4月の上旬あたり
②左近の桜(さこんのさくら)
●見頃は4月の上旬〜 中旬あたり
③御車返しの桜(みくるまがえしのさくら)
●見頃は4月の中旬あたり
必ずではありませんがおおよそこの順で開花していきます。
初めて常照皇寺を訪れる場合は、国の天然記念物である九重桜が咲く頃がおすすめです。
個人的には桜の木を含めた全体の形も美しい御車返しの桜がおすすめ。
見頃の参考になるよう、写真には撮影年月日を入れておきました。毎年同じ頃に見頃になるとは限りませんのでおおよその目安にしてください。
[ 2022年4月16日撮影 ]
常照皇寺の門前にも立派なしだれ桜があります。御車返しの桜が満開だったとき門前の桜も見頃でした。
方丈
茅葺きの屋根が趣のある方丈。前庭には御車返しの桜があります。この桜は常照皇寺にある3つの有名な桜の中でいちばん後に開花します。
方丈前の庭を覆うように咲く御車返しの桜。大きな桜なので方丈の中からは全体を見ることができません。
禅宗のお寺の方丈は6つの部屋が襖で区切られていることが多いです。しかし常照皇寺の方丈は襖が全て取り払われていて一つの大きな空間になっておりとても開放感があります。
襖絵は現代美術作家の植田曠躬(うえだひろみ)によるもの。
方丈の中央、天井下の空間に棚が設けられそこに仏像が祀られています。このような場所に仏像を配置するのは常照皇寺以外で見たことがありません。
仏像の形は薬師如来像ですが、常照皇寺では観音菩薩として祀られています。
方丈東側からは庭の九重桜を眺めることができます。建物の中から見る桜もとても綺麗で通路に座れば穏やかな春の日差しと風も感じられ、しばし時間を忘れてゆっくりと眺めていたくなります。
方丈の北側には土を高く盛った方丈庭園があります。この庭園は紅葉のシーズンがよさそうです。
開山堂(怡雲庵)
怡雲庵(いうんあん)と書かれた扁額がかかる開山堂。仏殿と開山堂が中で繋がっています。
開山堂の外、右側には多宝小塔と手水鉢なども置かれています。かつて常照皇寺には光厳法皇が戦乱で犠牲になった人達のために建てた多宝小塔がありました。
現在の多宝小塔は太平洋戦争での戦死者の遺族から寄進されたもの。
皇室ゆかりのお寺だけあってお堂の中は瓦敷きの立派な内部空間。堂内には天井の近く中央に釈迦三尊像と、それを囲むように十六羅漢像が左右に安置されています。
写真撮影禁止という注意書きもないので写真撮影が可能です。
写真左は常照皇寺の本尊、釈迦三尊像。写真右は寺の創建より古いとされる平安時代の阿弥陀三尊像。
建物の一番奥に安置されているのは開山の光厳上皇像。僧侶の姿をしています。
庭園にある3本の桜の名木
先にも述べたように、常照皇寺には桜の名木が3本ありそれぞれ開花時期が異なります。
私が過去2回訪れた2020年4月8日は九重桜が少し散り始め、左近の桜が咲き始め、御車返しの桜がまだ蕾でした。
2022年4月16日は御車返しの桜が満開で、九重桜と左近の桜はすでに葉桜になっていました。
おそらく3本の桜が同時に咲くことはないと思うので、どれか1本満開のタイミングで見ることができればよしとしましょう。
①九重桜
[ 2020年4月8日撮影 ]
京都府で唯一、国の天然記念物に指定されてる桜。
方丈東側、開山堂前にある桜です。
光厳法皇お手植えの桜で、弟の光明上皇から贈られたものと伝えられます。
現在は隣に植えられた2代目が大きく育っています。
②左近の桜
[ 2020年4月8日撮影 ]
岩倉具視によって御所から株分けされたといわれる桜。
開山堂から見て左前にある桜です。
2020年4月8日の訪問ではまだ開花し始めたところで、満開までにもう少し時間がかかりそうでした。
③御車返しの桜
[ 2022年4月16日撮影 ]
一重と八重が一枝に咲く珍しい桜。
方丈の前庭にある桜です。
江戸時代に後水尾天皇があまりの美しさに御車を返してご覧になったことからこの名が付きました。
2020年4月8日に訪問したときは蕾で花はごく一部にしか咲いていませんでした。
写真は2022年4月16日に再訪問して撮ったもの。この時は満開でした。
[ 2022年4月16日撮影 ]
よく見てみないと本当に一重と八重が一緒に咲いているかわかりません。ほとんど八重だけどその中に少しだけ一重が入っているように見えます。
舎利殿
九重桜の後ろにある舎利殿の中には小型から中型のたくさんの仏像が置かれています。
安置されているのは如来や菩薩に天部の仏像、達磨像やお坊さんの像など様々。手が欠けていたり破損していたり痛々しく感じる仏像もあります。
山国御陵
光厳天皇の眠る御陵。山門の手前を右に曲がるか、勅額門を入って右に曲がり階段を上った小高い場所にあります。
宮内庁管理のため中に入ることはできませんが、近くまでは行くことができます。
常照皇寺の御朱印
御朱印は拝観受付にまず御朱印帳を預けて拝観後に受け取るスタイルです。
光厳上皇(こうごんじょうこう) 300円
御朱印帳に書いてもらえます。桜のシーズン以外だと書き置きになることもあるようです。
常照皇寺
住所 : 〒601-0313 京都府京都市右京区京北井戸町丸山14-6
電話 : 075-853-0003
常照皇寺近くにある黒田百年桜
ドライブやツーリングが好きな人はさらに黒田の百年桜まで足を伸ばしてみるのもよいかと思います。
私が常照皇寺を訪れた2022年4月16日は御車返しの桜が見頃で、同じ日に黒田の百年桜も見頃になっていました。
黒田の百年桜
[ 2022年4月16日撮影 ]
樹齢300余年ともいわれる。ヤマザクラの突然変異で10〜12枚の八重の中に一重が混じる珍種。
常照皇寺の御車返しの桜も一重と八重が一枝に咲く珍しい桜でしたが、黒田の百年桜も同じく一重と八重が同時に咲くようです。
濃いピンク色の花がまとまって咲きます。円山公園の枝垂れ桜などの桜守 (さくらもり)として知られる造園業の佐野藤右衛門(さのとうえもん)親子が苗木づくりに成功し、15代目の佐野藤右衛門がこの幻の品種を「黒田百年桜」と命名しました。
常照皇寺と比べると電線などの人工物があって写真を撮るのには工夫が必要です。
すぐ隣には春日神社があり鳥居の右と社殿の裏にも桜が植えられています。
黒田の百年桜の開花状況は、向かいにあるおーらい黒田屋のホームページでご確認ください。