【京都山科最古のお寺】清水寺奥之院、牛尾山法厳寺の拝観と御朱印

法厳寺境内の春

京都市山科区牛尾山の中腹に、清水寺奥之院といわれるお寺法厳寺(ほうごんじ)があります。通称牛尾観音と呼ばれ山科にある60余りのお寺の中で最も古い歴史をもつお寺です。


牛尾山は音羽山とも呼ばれ、法厳寺も古くは音羽山観音寺といわれていました。法厳寺と東山区にある清水寺は同じ音羽山や音羽川、音羽の滝など共通の地名があることや、僧・延鎮(えんちん)と仙人・行叡(ぎょうえい)の出会いから歴史が始まりその起こりに共通点が多いことから法厳寺は「清水寺奥之院」として清水寺と長い間関係を持ち続けました。


現在は清水寺との関係はほぼ感じられない静かな山寺となっていて山科最古のお寺の歴史がひっそりと受け継がれています。法厳寺までの長い参道はハイキングコースとなっており豊かな自然を楽しむことができます。自然が好きで山歩きやハイキングが好きな方、静かなお寺が好きな方は一度訪れてみるのもよいかと思います。


この記事では清水寺奥之院として長い歴史を持つ法厳寺についてまとめてみました。大自然の山中にある過酷な環境のため法厳寺は幾度となく台風や水害の被害を受けています。興味を持っていただけましたらなるべく早めに法厳寺を訪れていただくことをおすすめします。


※お寺では法「嚴」寺と旧字の「嚴」を使用して「法嚴寺」と表記していますが、この記事では同じ意味で読みやすい漢字の法「厳」寺で「法厳寺」と表記しています。

法厳寺基本情報

寺 名牛尾山 法厳寺(ほうごんじ)
拝観時間公表なし [参考拝観時間]午前9時~午後4時
拝観料境内自由
拝観場所本堂・大杉堂・護摩堂・金生水など
宗 派本山修験宗
御本尊十一面千手千眼観世音菩薩(伝天智天皇作)
アクセス【自動車】名神高速道路「京都東」から駐車場まで約15分
【バス】京阪バス21「小山」下車、徒歩約1時間
駐車場・駐輪場無料駐車場あり

法厳寺公式ホームページにも拝観時間は表記されていません。参考の拝観時間は2023年の「春期京都非公開文化財特別公開」のイベントで特別公開されたときの時間です。通常時はほとんどお寺の方はいないようですが境内の拝観は自由です。

清水寺奥之院、法厳寺の歴史

奈良時代の770年、奈良・小島寺の僧であった延鎮は、ある夜の夢で金色に流れる水に導かれ京都の音羽山に入り行叡という仙人と出会います。行叡はこの地に観音像を祀るよう延鎮に伝えて沓(くつ)を残し去ってしまいます。その後延鎮は観音像を造ってを祀り、

奈良時代の778年、延鎮によって法厳寺(音羽山観音寺)が創建されました。

798年には延鎮と坂上田村麻呂が現在の清水寺がある場所に新寺を建立。法厳寺の寺伝では法厳寺の観音像を新寺に移して本尊とし、法厳寺には天智天皇作と伝えられる観音菩薩像が残されました。


新寺は法厳寺(音羽山観音寺)が移転して「音羽山清水寺」となり延鎮が初代住職に就き、残された山科の法厳寺は「清水寺奥之院」と呼ばれるようになりました。はじめの頃法厳寺と清水寺は共に法相宗のお寺でした。


平安時代には真言宗の開祖空海や天台宗の円珍・円仁、随心院を開いた仁海など名だたる僧が法厳寺で修行しています。仁海が牛の皮に曼荼羅を描き、その牛の尾を音羽山に納めたことから音羽山を「牛尾山」とも呼ぶようになりました。

昔は現在地より山上に寺があり13のお寺と3つのお宮があったとされています。

栄えていましたが南北朝時代には全山が焼失、その後も火災で焼失し江戸時代に本堂などが現在地に復興されました。明治維新の神仏分離令でも大きな打撃を受けましたがのちに復興。昭和時代の1950年には清水寺・法相宗と離別し現在は本山修験宗の単立寺院となっています。

清水寺奥之院といわれる理由

法厳寺が清水寺奥之院といわれている理由はいくつかの説があり正確なことはわかりません。


法厳寺側からは積極的に「清水寺奥之院」という主張がされていますが清水寺側からは法厳寺との関係についてあまり語られていません。法厳寺の寺伝では法厳寺が移転して清水寺になったとされていますがこれも1つの説で本当のことはわかりません。


しかし法厳寺と清水寺の両方に「音羽山」・「音羽川」・「音羽の滝」という地名があり、両寺共に延鎮と行叡の像を祀り同じ寺紋を使っています。


また明治元年の神仏分離令で清水寺も多くの末寺を失っていく中、第二次世界大戦後までは清水寺の住職が法厳寺の住職を兼務しています。法厳寺境内には大正時代に清水寺住職と法厳寺住職を兼務していた大西良慶の紀念碑が残っていることなどから清水寺との関係はなんらかあったのだろうと思います。


清水寺の始まりを記した『清水寺縁起』の中で、牛尾山は延鎮が行叡の沓を拾った所とされているので清水寺の創建とも関係がある延鎮と行叡の旧跡を「清水寺奥之院」としたという説もあります。


清水寺側の歴史についてはこちらの記事の中で紹介しているので興味がある方は下記のリンクからどうぞ↓
【写真撮影】被写体として見た早朝の清水寺【早朝拝観で混雑を避ける】

法厳寺までの長い参道はハイキングコース

法厳寺参道

法厳寺の参道は牛尾山ハイキングコースとしても利用されており、山を越えて上醍醐寺や滋賀県の石山寺へも行くことができます。


音羽川沿いに登っていく参道には空海に関係する旧跡が多く、道の左右にはいくつもの滝が流れています。音羽山などの自然や景観を詠んだ和歌の歌碑や、大蛇伝説にまつわる大蛇塚などもあります。参道にあるものを全て紹介することはできないので初めて訪れる場合でも特に目立つ場所のみを紹介します。

参道の終点である桜の馬場までは車やバイクで行くことができます。

ただし参道は細くすれ違いが困難な場所があるため運転には注意が必要です。ハイキングコースにもなっているので歩いているハイカーや、野鳥撮影をしているカメラマンがいることがあるので気をつけてください。


車の場合は参道を脇見するのは危険です。駐車できるスペースもほとんどないので車では参道の名所をゆっくり見ることはできません。


尚、参道の入口から徒歩なら1時間ほどで到着する法厳寺までトイレはありません。徒歩の場合は近くのコンビニなどで済ましてから登り始めるのがよいかと思います。最寄りのコンビニから法厳寺までのアクセス地図はこちら

露山水車

露山水車

法厳寺への参道、山に入っていく手前には「露山水車」という名前の水車小屋があります。法厳寺とは関係ありませんがかつてこの辺りにあった水車を2017年に復元されたようです。周辺に春は桜、梅雨にはあじさいが咲きます。

上醍醐・牛尾山ハイキングコース周遊案内図

上醍醐・牛尾山ハイキングコース周遊案内図

本格的に山に入る道の前に「上醍醐・牛尾山ハイキングコース周遊案内図」という看板が設置されています。上の写真は看板の法厳寺部分に少し手を加えて見やすくしたもの。


上部の赤枠が牛尾観音こと法厳寺。この看板のある場所から「かえる岩」→「銚子の滝(聴呪の滝)」→「音羽の滝」→「経岩」などを経て法厳寺の駐車場でもある「桜の馬場」に至ります。

大師堂

法厳寺参道大師堂と休憩所

案内看板から蛙岩をすぎしばらく進むと大師堂と休憩所があります。この先にもう一箇所ある休憩所は2024年5月現在壊れており使うことができないので歩きの方はここで一休みするのもよいかと思います。

ここは空海が法厳寺の参道に出る大蛇を封じるため祈祷(きとう)を行った場所。大師堂の中には大日如来と空海の石像が祀られています。現在の大師堂は昭和時代の1941年に再建されたもの。


右の写真は法厳寺までの距離を示す道標(明治時代の1896年建立)でここから18丁。1丁は約109mなのでここからは約2kmで到着します。

お経岩

法厳寺参道お経岩

空海が大蛇封じの次に参道の無事を願ってこの岩の上でお経を読み再度祈祷をしたと伝わっています。


ここは特に見通しが悪いので車やバイクを運転する場合は注意が必要です。大岩に気を取られていると対向車に気づくのが遅くなり危険です。

しずく谷不動尊と音羽の滝

法厳寺参道しずく谷不動尊

もともとはここに滝があり行場でしたが、山崩れで埋もれてしまっていたものを空海が不動明王を安置し行場として再開。その後も山崩れは起こり現在のしずく谷不動尊は復興されたもの。

階段の奥には小さな不動明王の石仏が祀られていて周辺の岩の間からは水が湧き出しています。しずく谷不動尊の反対側には清水寺にあるものと同じ名前の音羽の滝。

法厳寺参道道標

音羽の滝近くの道標には「清水寺奥之院」の文字が刻まれています。


このあたりは道路に山からの水が染み出していることがあります。道の山側には落ち葉と泥が溜まりぬかるんで滑りやすくなっていることがあるのでバイクの方は下りの時端に寄りすぎないよう特に注意が必要です。

桜の馬場

法厳寺桜の馬場

法厳寺の駐車場でキャンプ場としても活用されています。古くは「桜ヶ丘」ともいい天智天皇が大化の改新成就の記念にこの周辺に桜を多く植えました。

法厳寺の境内

法厳寺境内の春

桜の馬場から黒門くぐりさらに登るとようやく法厳寺の境内に到着します。


通常時はひっそりとしていて人の気配がほとんど感じられません。無人のことも多いようで行事がある時だけお寺の関係者が集まるようです。通常時は建物の中に入ることはできません。


赤いトタンの屋根の建物は庫裡と寺務所。本堂前には休憩できる机と椅子、本堂の左奥にはきれいとは言えませんが観光トイレがあります。

黒門

法厳寺黒門

法厳寺への最後の登りとなる場所に建つ2020年にできたまだ新しい門。横には珍しい木で造られた灯籠があります。黒門前を右に曲がれば法厳寺まで舗装された道が続きます。どちらから行っても同じ法厳寺の入口に着くのでどちらに進んでも構いません。

黒門をくぐり進んでいくと法厳寺の入口に到着。近くには山のお寺に似合わないテーマパークにでもありそうな赤鬼と青鬼が立っています。

本堂と法厳寺の御本尊

法厳寺本堂

現在の本堂は江戸時代に再建。

再建された年は1689年と1831年の2つの説があります。通常は閉まっていて中に入ることはできません。

毎年4月17日と10月17日は本尊が開帳され本堂の中に入ることができます。

御本尊の十一面千手千眼観世音菩薩は天智天皇の作と伝えられており、脇侍には空海作の不動明王と毘沙門天が安置されています。


その他にも厨子の中に空海が自作したという空海の木像、本堂右側には延鎮と行叡の座像が祀られています。

法厳寺御本尊

私が2023年の「春期京都非公開文化財特別公開」のイベントで特別公開されていた法厳寺を訪れたとき、本堂内は写真撮影禁止だったので本堂の右側にある寺務所内に飾ってあった御本尊の写真を撮らせてもらいました。

本堂の扁額「普門閣」の文字は空海筆。本堂右側には鳥居があり奥には金生水や黒泥窟、経塚や石仏などがあります。

2023年4月「春期京都非公開文化財特別公開」にて法厳寺特別公開

法厳寺2023年春特別公開看板

法厳寺は2023年4月17日(月)~21日(金)と4月29日(土・祝)~5月7日まで「春期京都非公開文化財特別公開」のイベントで御本尊や寺宝である「法厳寺縁起絵巻」や「行叡の木沓」などが特別公開されました。


残念ながら4月30日(日)に参道土砂災害・倒木等を受け安全を考慮し宝物の公開は中止されました。しかし御本尊の公開は最終日までされていました。

金生水・黒泥窟

法厳寺金生水と黒泥窟

本堂右側の奥には経塚や石仏、金生水や黒泥窟などがあります。「金生水」は延鎮が夢のお告げによって導かれた金色の水の水源。「黒泥窟」は天台宗の僧・円珍がここの岩を墨のようにして使い曼荼羅を描いたと伝えられています。

大杉堂

大杉堂には宇賀徳生神主王と、音羽山の天狗「大杉坊」が祀られています。背後には樹齢800年といわれる大杉。

護摩堂

法厳寺護摩堂

堂内には不動明王や愛染明王、十一面千手観音像など大小様々な仏像が安置され毎月17日昼の1時から護摩法要が行われています。建物の背面には丸い窓が開いており奥にある滝道場が見えるようになっています。

護摩堂の裏には五智瀧と書かれた石碑が建っており滝行ができる場所があります。6月~9月までは一般の人でも滝行(予約制)の体験ができるようです。

鐘楼堂

江戸時代の1691年に建てられた鐘楼。1695年に鋳造された釣鐘には「京清水奥院」の文字が刻まれています。

大西良慶筆、当山開堂1150年紀念碑

法厳寺1150年紀念碑

大正時代の1921年、法厳寺住職だった大西良慶(清水寺住職・興福寺住職を兼任)が残した石碑。右側の小さく縦長の文字には當(当)山開堂1150年と書かれています。この紀念碑が建てられた1921年から1150年前は771年で、770年に延鎮と行叡がこの山で出会ったという年とほぼ一致します。

法厳寺の御朱印

法厳寺の御朱印

普門閣 書き置き 300円

御朱印は2023年の「春期京都非公開文化財特別公開」のイベントで特別公開された時に通常御朱印の書き置きをいただきました。この他にも特別公開にあわせてたくさんのアートな御朱印が制作されていました。


通常は行事がある時でないと法厳寺で御朱印をいただくことはできないようなので護摩供・月例会がある毎月17日に訪れてみるのがいいかと思います。

法厳寺境内から音羽山登山

法厳寺境内音羽山登山口

法厳寺の入口付近にある西国三十三所霊場、四国八十八ヶ所霊場がある場所の奥(鉄パイプの手すりが見える所)から音羽山へと登ることができます。


昔は山上に13のお寺と3つのお宮があったということから登ってみましたが、やはり素人にはその跡地のようなものを見つけるのは難しく、登山道から外れることもしなかったので登山道沿いにはそれらしいものは見当たりませんでした。


登山やハイキングが目的でないなら無理して行く必要はありません。

音羽山山頂から滋賀県の景色

写真は音羽山山頂から滋賀県側の景色。法厳寺の本堂は昔、音羽山山頂付近にありましたが焼失し江戸時代になって現在の場所に再建されました。


法厳寺境内から音羽山山頂までは登山素人の足で行きはパノラマ台に寄り道したので往復1時間半くらいかかりました。初めて登りましたが分岐も少なく迷うこともありませんでした。

法厳寺

住所 : 〒607‐8069 京都市山科区音羽南谷1
電話 : 075‐595‐3317
電話 : 075‐581‐1586(寺務所)※御朱印のお問い合わせはこちらの番号へ