2019年11月5日(火)第55回京都非公開文化財特別公開にて特別公開されている東福寺塔頭正覚庵を訪れました。
正覚庵は通常非公開のお寺です。
特別公開されている時か、毎年11月23日の筆供養の日しか拝観することはできません。
あまり公開されていませんが珍しい建築や、高低差を活かした庭園とそこに植えられた紅葉が秋にはとても美しい景色をつくる魅力あるお寺です。
この記事では第55回京都非公開文化財特別公開の内容と後日筆供養の日に訪れた庭園の紅葉、御朱印など正覚庵の拝観内容をまとめています。
毎年春と秋に京都古文化保存協会が行う京都非公開文化財特別公開は文化財の維持管理が目的のため、基本的に写真撮影はできません。建物や紅葉の写真は11月23日筆供養の日に撮影しました。
[ もくじ ]
第55回京都非公開文化財特別公開 正覚庵基本情報
公開場所 | 東福寺塔頭 正覚庵(しょうがくあん) 初公開 |
公開期間 | 2019年11月1日(金) ~ 11月10日(日) |
時 間 | 午前9時~午後4時(拝観受付) |
拝観料 | 大人800円 / 中高生400円 |
公開内容 | 本堂(旧白洲屋敷) 茶室(旧白洲屋敷玄関) 書院 山本隆筆襖絵 庭園 他 |
宗 派 | 禅宗・臨済宗 東福寺派 |
御本尊 | 釈迦如来 |
アクセス | 京阪電車およびJR奈良線「東福寺駅」より南へ徒歩10分 京阪電車「鳥羽街道駅」より東へ徒歩7分 |
駐車場 駐輪場 | 東福寺駐車場は紅葉シーズンは使用不可 東福寺専用駐輪場あり |
正覚庵の歴史
正覚庵は鎌倉時代(1290年)伊達政依(だてまさより)により創建、
開山は東福寺5世・山叟慧雲(さんそうえうん)。
当初は現在地の西南、深草正覚町にあったため寺の名前とした。
明治16年伽藍大破により現在の場所に移転。昭和48年に本堂を再建しその後書院、庫裏、威徳堂、山門を建て替え現在に至る。
1804〜1818年廃筆を供養するために塚を築き、筆供養を行ったことから筆の寺として知られている。毎年11月23日(勤労感謝の日)に筆供養が行われ、1日限り一般に公開される。
拝観レポート
写真撮影は入り口部分のみ可能で、建物内は全て撮影禁止(庭も含む)でした。
限られたスペースでしたが門の入り口や庇の部分に飾られたお皿のちょっとした絵や書が遊び心を感じさせます。
今回の特別公開で拝観できたのは5箇所
①書院
②本堂1箇所目(白州屋敷)
③本堂裏側の庭散策
④本堂2箇所目(白州屋敷)
⑤茶室(白州屋敷)
書院
最初の拝観場所は書院で、描かれている襖絵は日本画家の山本隆氏によるもの。
2019年4月に完成したようです。
3つの部屋にそれぞれの襖絵が描かれており、全体のテーマは天地人。拝観順に並べると下記のようになります。
「人」の部屋 梅の木を眺める老夫婦
「地」の部屋 りんごや柿とナスにみかん
「天」の部屋 かわいい子供の姿の風神雷神
絵のタッチは優しくおおらかで普段禅寺で見るような襖絵とはちがい穏やかです。この襖絵は正覚庵オリジナルの御朱印帳の表紙になっています。
苔と石の庭
書院南側の窓からは庭が見えます。苔と石で構成された庭で正覚庵の苔は青々として緑が濃く、配置された飛び石や巨石のグレーとそこに差し込む太陽の光が混ざり合いとても美しい庭でした。
苔好きの方にもおすすめできる庭です。この庭は境内奥の本堂まで続いており、後ほど少しの範囲ですが本堂から出て散策することができました。
本堂(白州屋敷)
書院から階段を上がり少し高い所に立っている本堂は、綿花貿易で財をなした白州文平の兵庫県伊丹市内にあった白州屋敷を一部移築したもので約100年前の建物だそうです。
建築道楽だったという白州文平のこだわりを建物のいたる所から感じることができます。例えば本堂は四室ある天井がすべて違う造りになっていたり、天井が柱の向こう側まであるなど普通ではありえない建物の造りをしています。
本堂の2箇所目に案内された建物には床の間が二つあったりもしました。そして2部屋ある天井もまた微妙に違う造り、廊下には引き戸がありましたが収納するスペースはないなどとにかく普通の建物では考えられないような不思議な造りでした。
また本堂はコンクリート基礎の上に杉の丸太の土台の上に建っており、ここにも変わった手法が使われていました。
建築が好きな方は一度訪れてみても面白いのではないでしょうか。
天井を見上げると格天井の中に屋久杉の一枚切り出し板が入っており、これ一枚で家が立つほどの値段だそうです。
余った屋久杉は廊下に使用しており、廊下の床板も木を大きく一枚で使っていたり細長かったりで大きさもバラバラでした。
写真 : 京都古文化保存協会『拝観の手引』より
本堂の裏側から出て庭を少しではありますが散策できるようになっていました。庭には紅葉の木も植えられており、葉が色づけば赤と緑の美しい景色が見られそうです。
庭から見える塔のような造りの部分は登れることはなくただの飾りで、実際にその真下に行くことができるのですが階段などは何もなかったです。
写真 : 正覚庵パンフレットより
茶室(白州屋敷)
茶室は元白洲屋敷の玄関として使われていたもので、そのため一般にイメージする茶室とは違いにじり口もなく内部の空間もとても広く天井も高かったです。
正覚庵の御朱印
正覚庵の御朱印は威徳堂(いとくどう)と書かれたもの1種類。今回の特別公開では書き置きのみの対応となっていました。
また正覚庵には山本隆氏の襖絵を用いたオリジナルの御朱印帳(3000円)が2種類あり、そこにはすでに威徳堂と書かれています。
威徳堂 300円 書き置きのみ
正覚庵は通常公開されていませんが、御朱印と御朱印帳の受付はされています。
今回は書き置きのみでしたが混雑していない時期に門が開いていて和尚さんがいれば 御朱印帳に直接書いてくれるそうです。
11月23日正覚庵筆供養と紅葉の庭
正覚庵の庭が美しかったのと紅葉が植えられていたので紅葉の時期にも訪れてみたいと思い、11月23日の筆供養の日にもう一度行ってみました。
この日は庭園が無料公開されており、人も多かったですが思った通り紅葉の美しい庭を見ることができました。本堂はお茶席になっていました。(こちらに上がるのは有料)
紅葉シーズンは大混雑の東福寺を避けて塔頭寺院でのんびり紅葉を楽しむのもいいかもしれません。
2020年筆供養の日の御朱印
2020年の筆供養の日には御朱印が3種類に増えていました。
通常の威徳堂の御朱印は秋の絵柄が入ったものになっていました。
2020年には筆供養の御朱印もつくられたようで、写真入りのもの(上の写真)と当日限定30枚(下の写真)の2種類ありました。
筆供養の日 当日限定の御朱印
300円 書き置きのみ 限定30枚