西国三十三所を1日で回る!?京都国立博物館の特別展【体験レポート】

特別展聖地をたずねて西国三十三所の信仰と至宝看板

2020年8月25日(火)京都国立博物館で開催されている、特別展聖地をたずねて─西国三十三所の信仰と至宝─を見に行きました。西国三十三所は2018年に草創1300年を迎え、それを記念して2020年特別展が開催となります。


もともとは2020年の4月に開催される予定でしたが新型コロナウイルスの影響で7月に延期となりました。

京都国立博物館へは必ずマスクを着用しての、鑑賞となっています。

入口では手首に機械を当てての検温もありました。他にも展示室内では間隔を空けるや会話を控えるなどのコロナ対策が必要です。

ウォータークーラーの水も止まっているので、飲み物は必ず自分で用意してください。

平日の朝に行ったので待ち時間もなく展示室も空いていました。時間が経っても混雑することはなくゆっくりと鑑賞することができました。

展覧会は前期と後期に分かれており展示替えが行われます

【前期】7月23日(木・祝)~ 8月16日(日)
【後期】8月18日(火)~ 9月13日(日)

この記事は後期の展示内容の体験レポートです。

[特別展]聖地をたずねて─西国三十三所の信仰と至宝─概要

展覧会名西国三十三所 草創1300年記念
特別展 聖地をたずねて─西国三十三所の信仰と至宝─
会 場京都国立博物館 平成知新館
会 期2020年7月23日(木・祝)~ 9月13日(日)
観覧料一 般 1,600円
大学生 1,200円
高校生  700円 
中学生以下は無料
音声ガイド【料金】1台600円(税込) 
【収録時間】約40分
【受付時間】9:30~17:15
開館時間9:30~18:00(入館は17:30まで)
休館日毎週月曜日※8月10日(月・祝)は開館
駐車場 / 駐輪場入口隣に有料駐車場あり / バイク・自転車無料駐輪場あり

平成知新館内にあるコインロッカーは100円で利用でき、使用後は戻ってくるので荷物がある場合は短時間でも利用した方がお得です。

[ 注意事項 ]

展示室内・グッズは撮影禁止です。館内では一般的に知られているコロナ対策が必要です。

西国三十三所とは

観音菩薩を祀る三十三カ所お寺(霊場または札所)を巡る日本最古の巡礼路。近畿と岐阜の観音霊場を巡礼します。

三十三の数字は観音菩薩が三十三の姿に変身して人々を救うことにちなみ、お寺を参拝した証に札を納めたことから札所とも呼ばれます。


はっきりとしたことはわかりませんが、現在と同じ順路(順番)が設定されたのは室町時代中期とされています。

西国三十三所 地図

西国三十三所札所地図

写真:特別展図録 京都国立博物館

特別展の展示構成

展示は3階から1階へと下るように見ていきます。順路どうりに見るのもいいですが、疲れてしまうという人は自分の興味があるところから見ていくのもいいかもしれません。

●お経や古い仏像に興味がある → 3階から
●西国三十三所のことをはやく知りたい → 2階から
●仏像や御朱印などに興味がある → 1階から

以下で各階の代表的な展示と各章の要点や見所などをまとめました。

3階の展示 お経・古い観音像と六道絵

3階は西国三十三所への導入部分になっています。観音菩薩の功徳が説かれたお経や古い時代の観音像、浄土信仰に基づく六道思想から描かれた六道絵などが展示されています。

第1章「説かれる観音」

『法華経』観世音菩薩普門品(ふもんぼん)に観音菩薩の功徳が説かれます。

西国三十三所の三十三という数字は、観音菩薩が相手に合わせて三十三とおりの姿に変わって教えを説くことに由来しています。


また飛鳥・奈良時代の観音像が展示されており、古い時代に信仰された観音様の姿を見ることができます。

第2章「地獄のすがた」

平安時代に浄土信仰に基づく六道思想が世の中に広まります。

六道とは天・人間・修羅・畜生・餓鬼・地獄の6種類の迷いの世界。第2章の主な展示は六道思想から描かれた六道絵です。

『摩訶止観』には六道それぞれに六観音を配当する記述があり、
これに基づき日本では六観音信仰が10世紀頃から盛んになりました。

六道から六観音が救ってくれる六観音信仰、それぞれの担当をまとめると下記のようになります。

[ 六道と六観音の対応 ]

天 道 → 如意輪観音
人間道 → 准胝観音(真言宗) 不空羂索観音(天台宗)
修羅道 → 十一面観音
畜生道 → 馬頭観音
餓鬼道 → 千手観音
地獄道 → 聖観音

真言宗と天台宗で人間道が異なるので正確には七観音になります。1階の展示では七観音すべての姿を見ることができます。

2階の展示 西国三十三所の始まり、縁起と参詣曼荼羅

2階からが西国三十三所の縁起や成立に関わった人など直接関係のある展示がスタートします。各お寺の歴史や由緒を説明する縁起、建物再建のための勧進状や参詣曼荼羅などが展示されています。

第3章「聖地のはじまり」

西国三十三所の始まりは718年奈良県にある長谷寺の開祖・徳道上人が仮死状態になり、地獄で閻魔大王から観音霊場を巡ることで得られる功徳を広めるよう依頼されます。起請文と三十三の宝印を授かり蘇生した徳道上人は巡礼を広めようとします。


しかしこの時はなかなか発展せず、平安時代になって徳道上人が兵庫県の中山寺に納めた起請文と宝印を花山法皇が取り出し、自ら西国三十三所巡礼に出ます。


このようなことから西国三十三所の創始者を徳道上人、中興の祖を花山法皇としています。

第3章の見所「金剛界曼荼羅成身会 三昧耶形」

第一番札所青岸渡寺の那智の滝近くで見つかった出土品で立体曼荼羅を構成した展示があります。金剛界曼荼羅の真ん中、成身会(じょうじんね)とその下の三昧耶会(さまやえ)を組み合わせたこの展示は他に例がなくめずらしいもののようです。


立体曼荼羅は展示室のみで見れるもので、図録では個別に掲載されているのでぜひ展示室で見てもらいたいです。

第4章「聖地へのいざない」

建物の再建や修復の集金のために使われたという各お寺の参詣曼荼羅がずらりと並んでいます。お寺の全盛期の様子をかなり豪華に描いた参詣曼荼羅はもともと折りたたんでもち運んでいたものなので折り目がついています。

「清水寺参詣曼荼羅」

清水寺参詣曼荼羅

写真:特別展図録 京都国立博物館

どの参詣曼荼羅も結構大きいものなので近くで見ると参拝している人の表情などもわかります。室町時代にはこれまで巡礼していた修行僧や修験者だけでなく庶民も巡礼に出るようになり、多くの人からの寄付が各お寺再建の力になったようです。

1階の展示 仏像・御朱印・納経帳・寺宝

1階は各お寺が持っている仏像や絵画とその他の寺宝、昔の西国三十三所巡礼者たちが残したものなどが展示されています。

第5章「祈りと信仰のかたち」

ここで展示されている仏像のほとんどは観音菩薩です。第2章の六道と対応する六観音または七観音すべての姿を見ることができます。

彫刻で如意輪観音・不空羂索観音・十一面観音・馬頭観音・千手観音・聖観音の六観音。絵画に准胝観音の姿が描かれています。

左 / 粉河寺「千手観音立像」・右 / 松尾寺「馬頭観音坐像」

写真:特別展ポストカード 京都国立博物館

第5章の見所は後期の展示の粉河寺の千手観音立像(上写真左)と六角堂の秘仏如意輪観音坐像(ページトップ看板写真中央)です。


特に秘仏は普段六角堂に参拝しても見ることができません。23cmほどの小さな仏像を360度間近でじっくりと見れるのも美術館ならではです。

六角堂の秘仏本尊横に配置されているもう1体の如意輪観音坐像(鞘仏)も展示されています。

六角堂(頂法寺)について詳しく知りたい方はこちらからどうぞ。


その他のおすすめは西国三十三所で唯一本尊を馬頭観音とする松尾寺の馬頭観音坐像(上写真右)です。お前立ち(秘仏本尊の前に置かれる仏像)ではありますが、優しい表情が多い観音像の中でこの1体だけ怒りの表情をしており迫力があります。


松尾寺は気軽には行くことができない場所にあるお寺なのでここで見ておくことをおすすめします。

第6章「巡礼の足あと」

ここでは現代の西国三十三所巡礼でも使われている笈摺(おいずる)や御朱印、巡礼札などが展示されています。

「納経帳」

西国三十三所納経帳

写真:特別展図録 京都国立博物館

1869年の納経帳。もともとはお経を納めた証として御朱印を頂いていました。


ページ左側は第十四番札所三井寺の御朱印、右側は第三十一番札所長命寺の御詠歌(ごえいか)でこの頃にも御朱印と御詠歌がセットで書かれていたことがわかります。


三井寺の御朱印中央の文字はおそらく三井寺大悲殿、現代の三井寺の御朱印は大悲殿の文字のみです。


長命寺の御詠歌は「八千年や 柳に長き 命寺 運ぶ歩みの かざしなるらん」と書かれています。

第7章「受け継がれる至宝」

各お寺の様々な寺宝が紹介されています。

第7章の見所は中山寺の「西国三十三所観音集会図」という絵画作品で、西国三十三所の御本尊がすべて集合したとても豪華で華やかなものになっています。

展覧会グッズ

グッズコーナーには今回の展覧会オリジナルのグッズと、西国三十三所の御朱印帳などグッズや各お寺の名物(食べ物)も同時に販売されていました。

特別展オリジナルのグッズは定番のポストカードやクリアファイルなどを中心に、巡礼ならではの御朱印帳も販売されています。


珍しい物では西国三十三所の33体の本尊をプリントしたモノサシなども販売されていました。西国三十三所の昔のガイドブック「西国順礼独案内図」をオレンジ1色にした手ぬぐいもなかなか面白いと思います。


特別展オリジナルのグッズの価格はちょっと高めに感じました。グッズをいっぱい買いたいのであればそれなりに用意しておいたほうがいいかもしれません。

図録

特別展聖地をたずねて図録

2,700円(税込)

展示替えがあるので出品作品すべて見ることは難しいと思います。
図録にはすべて掲載されているので、後から振り返ったり理解を深めるのに便利です。

特別展まとめ

西国三十三所の札所はいくつか行ったことがありますが、現地で参拝しても見れないものがあります。秘仏をはじめあまり公開されていない寺宝は西国巡礼をしていても見たことがないという人が多いのではないでしょうか。


それぞれのお寺が持つ歴史や寺宝をまとめて見ることができるのもめったにない機会だと思います。札所の中には交通手段が発達した現代でも気軽には行けないお寺も含まれます。これらのお寺から出品されたものが街中で見れるというだけでも行く価値はあると思います。


ちなみに京都国立博物館から一番近い西国三十三所の札所は第十七番六波羅蜜寺です。まだ行ったことがなければ帰りに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

国宝「五智如来坐像」安祥寺

安祥寺五智如来坐像

写真:京都国立博物館ポストカード

西国三十三所とは関係ないですが1階の彫刻コーナーで必ず目に入る令和元年に国宝になった安祥寺の五智如来もおすすめです。


安祥寺について詳しく知りたい方は下記のリンクよりどうぞ↓
【京都】安祥寺秋の特別公開と御朱印情報【五智如来が令和元年国宝に】

今回の展覧会はコロナの影響でどうしても行くことがでず、六観音が見たかったのであれば西国三十三所の札所ではありませんが千本釈迦堂(大報恩寺)で彫刻の六観音すべてそろった形で見ることができます。今回見れなかった方はぜひこちらにも足を運んでみてください。